「困ったなー。親父が亡くなって、そろそろ相続手続をしないといけないんだけど、なにから始めればいいのかな?」
身近な方が亡くなって、はじめて相続手続をしなければならない。
そんなとき、「相続」って何から始めればいいのでしょうか?
銀行の預金を解約する、自宅の土地や建物の名義を変える、相続税を払う・・・など、やらなければならないことはたくさんありますが、やみくもに動くとかえって無駄な手続きが増えてしまいます。
愛知県で【相続手続・遺言作成】を専門に行っている女性の行政書士です。
ここでは、相続手続の基本的な流れについて、ストーリーにそって、分かりやすくご説明しますよ!
【この記事の信頼性】
・遺言作成や相続手続を専門に行っている行政書士自らが書いています。
・実際に業務で多くの相続手続を行っており、豊富な経験に基づいたアドバイスを記載しています。
・建前と本音(実務)をあわせて掲載しており、単なる知識だけではなく、実際の手続きでお役に立てます。
相続のはじまり
例年になく暑かった今年の夏、あんなに元気だった父が急死してしまったのです。
残された家族は、母・愛知幸子さん、長男・愛知一郎さん、長女・稲沢花子さんの3人。
父には、自宅の土地や建物、銀行の預金といった財産があります。
「相続手続って何するんだっけ?」
何も準備していなかった一郎さんたちは途方に暮れてしまいました。
やみくもに動くと・・・
「そういえば、人が亡くなると、銀行の口座が凍結されてしまうって聞いたことがあるぞ!
すぐにお金をおろしに行かないと、生活費が無くなってしまう!!」
あわてた一郎さんは、お父さんが普段使っていた銀行へ行きました。
あのー、父が亡くなったんで、相続手続したいんですが・・・
相続手続ですね。
では、お父様が亡くなられたことが記載してある戸籍をお持ちください。
わかりました!(戸籍って役所で取るんだよな・・・?)
一郎さんは市役所へ行って、父の亡くなったことがわかる戸籍を取りました。
そのあと、先程に銀行へ行くと・・・
たしかに、お父様が亡くなられたことは確認致しました。
それでは、口座を凍結致します。
今後、お父様の銀行口座は、現金の出し入れや引き落としなどができなくなります。
それは困るなぁ。
すぐに解約したいんですが、どうやってするんですか?
そうですね。
解約をするには、お父様が生まれてから亡くなるまでの一連の戸籍謄本(こせきとうほん)、相続人様全員の戸籍謄本、相続人様全員の印鑑と印鑑証明書をお持ちください。あとは、当行の通帳やキャッシュカードも必要です。遺言書はございますか?遺産分割協議書は作られますか?・・・・・・
戸籍謄本?さっきの戸籍と何がちがうの?遺産分割協議書?・・・・・・すみません、もう一度お願いします!
結局、今日できたのは、口座の凍結だけ。
解約は必要な書類をすべてそろえてからでないと、できないそうです。
また市役所に行くのか。。。
でも、市役所も銀行も平日しか開いてないしなー。
明日から仕事があるんだよなー。
はぁーーー。どうしよーーー。
ちなみに・・・
「人が亡くなると銀行口座が勝手に凍結される」というのはデマです。
勝手に凍結されることはなく、戸籍などで亡くなった事実を銀行に伝えるとはじめて凍結されます。
役所から亡くなった事実を勝手に銀行に伝えるということはありません。
専門家のアドバイス
銀行から自宅へ戻る途中で、一郎さんは知り合いの行政書士に会いました。
一郎さん、だいぶ困ってるみたいだけど、どうしたんですか?
今、父の相続をやろうと思って、父がお金を預けていた銀行に行ってきたんですが、解約するにはだいぶ時間がかかるみたいで。
用意するものも多すぎて、どうしようかと思っていたんです。
相続手続ですね!よかったら私がアドバイスしますよ。
STEP1. まずは戸籍を集める
じゃあ、まず何からすればいいですか?
そうですね。まずは相続人が誰かを調べましょう!
相続人なんてわかってますよ。僕でしょ。それに、母と妹。
たしかにその可能性が高いですね。
でも、相続人がその3人だってこと、銀行の人にはどうやって証明するんですか?
うーーーん。
昔からその家族で住んでるし、証明って言ってもなぁーー
一郎さんたちが相続人であることを証明するために必要なもの、それは戸籍です!
そういえば、銀行の人も戸籍が色々いるって言ってた!
わかった、まずは戸籍を集めればいいんだね!
一郎さんはまず、相続手続に必要な戸籍を集めて、自分たちが本当に相続人なのかどうか確かめることから始めました。
誰が相続人となるかは、法律で決まっています。
まずは、ご自身が本当に相続人かどうか、こちらから確認してみましょう。
相続人の調べ方についてはこちらから
STEP2. 相続財産調査をする
やっと戸籍が全部そろったぞ!次は銀行の解約だ!
ちょっと待って、一郎さん。
お父さんの財産って銀行だけですか?
ううん。自宅の土地や建物も父の名義だし、あとは株もやってたかな。いや、株はもう全部売ったのかも?あと、車もあるし・・・。
一郎さん、まずはお父さんの相続財産をすべて調べてみてはどうですか?
たしかにそうだね。一緒に住んでても、父の財産って全部は知らないかも。
相続財産に漏れがあると、また相続手続をやり直さないといけなくなるから大変ですよ。
では、相続財産調査の仕方を教えますね。
財産調査?なんか大げさだなー。
うちは相続税がかからないと思うし、わざわざ調査なんか必要なの?
調査をすることで、相続人が知らない財産がでてくるかもしれませんよ!
わかったよ。じゃあ、財産調査とやらのやり方教えて!
次のチェックリストにしたがって、亡くなった方の相続財産を調べてみましょう。
また、亡くなった方の持ち物(通帳など)を調べる時に、遺言書がないかどうかも確認しましょう。あとから遺言書がでてくると、相続の分け方を決め直さないといけない可能性がありますよ。
相続財産の調べ方についてはこちらから
STEP3. 財産目録を作る
相続財産の調査が終わったら、その内容を財産目録としてまとめましょう。
財産目録を作る目的は、亡くなった方の相続財産全体を把握することと、あとは相続税がかかるかどうかのチェックもできるからおススメですよ。
手書きでもいいですが、全体の相続財産額を計算するためにも、エクセルで作るといいですよ。
よーし!財産目録を作るぞ!
ところで、うちの自宅の土地っていくらなんだっけ?
さぁーーー。
斜め向かいのお宅は1000万円ぐらいで売れたって言ってたけど。
銀行の預金は金額が決まってるけど、土地や株の評価っていくらにすればいいんだろ?
一郎さん、相続では不動産などの評価方法も決まっています。
ただし、これは相続税がかかる場合の評価方法だから、相続税がかからない場合は必ずしもこの方法を使わないといけないわけじゃありません。
相続税がかからない場合も、この評価方法を使うのが一般的ですけどね。
じゃあ、次は不動産などの財産の評価方法を教えてよ!
具体的な財産目録の作り方はこちらから。
エクセルでダウンロードできる財産目録見本も掲載していますよ!
財産目録の作り方はこちらから
あと、大事なのが、相続税がかかるかどうかです。そのチェック方法も伝えておきますね!
相続税申告が必要な場合、相続開始から10か月以内と時間制限があるから、早めにチェックしてみてください。
相続税がかかるかどうかはこちらからチェック!
相続税の確認方法
STEP4. 相続財産の分け方を決める
相続人が決まり、財産目録を作ったら、次は相続人全員で相続財産の分け方を相談しましょう。
相続財産って、法定相続分で分けるんだよね?
そうですね。
たしかに遺言書が無ければ、法定相続分を目安に考えてもいいと思います。ですが、実際の相続で、分け方って自由なんです。
ええっ!?自由に分けていいの?
相続人全員が納得してハンコを押してくれれば、どんな分け方をしてもいいんですよ。例えば、お母さんが全部相続してもいいってことです。
そうなんだ。
でも、自由って言われるとかえって困るなー。なにか考え方の基準になることって無いの?
あります!
では、次は遺産分割の方法について、説明しますね。
財産目録ができたら、どの財産を誰が相続するか決めましょう。
分け方は自由ですが、ここで揉めると相続がまとまりません。
ここでは、様々な遺産分割の方法について、ご説明いたします。
遺産分割の方法
STEP5. 遺産分割協議書を作る
相続財産の分け方が決まったら、それをきちんとした形で書面に残しましょう。それが、遺産分割協議書です。
遺産分割協議書には、亡くなった方のすべての財産を記載し、誰がどの財産を相続するかを記載します。
最後に、相続人全員が署名し、実印を押します。
STEP6. 預金の解約や不動産の名義変更をする
遺産分割協議書ができて、相続人全員が署名・押印したら、いよいよ、預金の解約や不動産の名義変更をしましょう。
やっとゴールだ!!
ちなみに、各銀行で相続手続をしようとすると、銀行の人に「相続手続依頼書」や「相続届」といった書類をもらいます。これは、各銀行の財産についてのみの遺産分割協議書のことです。各銀行の専用用紙に毎回相続人が全員署名・押印してもいいのですが、少し面倒なうえ、不動産がある場合は法務局に出す遺産分割協議書を結局作らないといけませんし、相続税申告がある場合は税務署に出す遺産分割協議書が必要です。
それなら、はじめから、すべての相続財産が書かれた遺産分割協議書を作った方が楽です!
それに、各銀行専用の相続書類で手続きをした場合、最終的に誰がどの財産をもらったか、まとめた書類がなく、後々見返すことができません。
基本的な相続手続としては、遺産分割協議書を作ることをオススメします。
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